医療法人にするメリットは
個人医院を開業し、経営も軌道に乗って来ますと医療法人を検討されるケースが多く、医療法人にするといいことが沢山あるように勧められるかもしれません。が、よく検討しなければならない事もあります。
医療法人にするメリットは事業承継と節税、そして介護保険事業への展開ができることです。
メリット1:事業継承
医療法人で開設した診療所や病院の病床は、誰が医療法人を経営していても医療法人の許可病床であって、経営者の異動に影響を受けません。
出資金の小さな医療法人を設立し、法人に利益が多くたまる前に事業承継者に出資金を贈与や譲渡によって渡します。そうすれば将来相続が発生しても、出資金をとおして医療法人の財産は事業承継者に移っていますから、その分相続税が少なくなるという意味で事業承継が楽になります。
メリット2:節税
個人の所得税と住民税は、所得が1,800万円を超えた分には50%かかり、4,000万円を超えた分には55%かかります。
それに対して法人にかかる法人税と住民税は36%前後ですから10%から20%前後低くなります。
医療法人にしますと役員報酬や医師給与を支払い、法人の経費にしますから、単純に同じ所得に対して10%以上税率が違うという事にはなりませんが、税率は低くなります。
その他、役員報酬や医師給与からは給与所得控除が引かれます。また役員退職金の支給規程を定め、役員退職金のために生命保険に加入し、保険料の一部を経費にすることができます。
メリット3:本格的な介護保険事業の展開
個人医院でも保険医療機関であれば、「みなし介護保険事業者」として扱われ、居宅療養管理指導や訪問看護、訪問リハを実施することができます。
しかし本格的な介護保険事業である老人保健施設や訪問看護ステーション、デイサービスなどは法人格が必要です。医療に隣接する介護事業を行うためには法人格をとる必要があるのです。
デメリット:医療法の規制
医療法人のデメリットもあります。
それは医療法の規制を受けることですが、その規制が厳しくなる傾向にあります。
医療法人は剰余金の配当が禁止されていますので、一般法人のように利益が出たからと言って出資者に分配できません。経営が軌道にのって、多額の内部留保がある場合には、出資社員の持分評価額が増えて、相続問題や払戻し請求による法人の資金流出問題が起こりかねません。また財産の確実な保全が要求されますから株式投資などはできませんし、法人の資金を役員に貸し付ける行為なども認められません。毎年決算書の提出が求められていますので、内容によっては是正が求められるケースがあります。
医療法人をお薦めできないケースを紹介します
- 個人負債が大きすぎて、負債を医療法人に取り込めない場合
- 個人で稼いだものは、個人で自由に使いたい場合
- 法人格が必要な事業を行う予定がない場合
- 個人で所得税の概算経費を使うと有利な場合